UXスペシャリストとして、メーカー向けモバイルアプリの仕様検討に携わりながら、デザイン思考を活用したワークショップの企画運営も手がける佐川 隼一。佐川の経験を通して、やりたいことを実現したプロセスと、UXデザインの専門家として重要な視点とは何かを紐解いていきます。

ユーザーがどう感じるのか、それはユーザーにとって嬉しいのか、を考え抜く

▲先端技術事業部 エクスペリエンスデザインセンター UXスペシャリスト 佐川 隼一

 

クレスコのエクスペリエンスデザインセンター(EXDC)は、製品やサービスにおけるユーザーの体験価値の最大化をめざし、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の設計や改善を行っている部署。対象となる製品やサービスは法人向けも一般消費者向けも両方扱っており、顧客業種も多岐にわたるのが特徴です。

 

UXスペシャリストである佐川は、クレスコ側のチームリーダーとして、メーカーの消費者向け製品に関するモバイルアプリの仕様検討などを担当しています。

佐川「リーダーとしての業務は、進捗管理や関係各所との調整のほか、お客様窓口となって、要件や要求をメンバーに展開すること。今の作業段階では一定のスキルや経験が必要なので、各メンバーの能力や経験に応じてタスクを割り振っています」

佐川はほかにも、法人のお客様向けセミナー“サービスデザイン支援ワークショップ”のファシリテーターも担当しています。

佐川「これはデザイン思考(ユーザーの潜在的なニーズや課題を掘り起こし、本質的な価値を創出する思考方法)のプロセス・マインドセットの習得や、デザイン思考による新規サービスの開発支援などをワークショップ形式で行うものです。私は、ワークショップそのものの設計から、当日のメインファシリテーターまで、一貫して務めています。

 

UXデザインでもワークショップでも、ユーザー視点が重要です。ユーザーがどう感じるのか、それはユーザーにとって嬉しいのか、といつも考えていますね。目の前の業務の、その先にいる方々を大事にする意識を持つようにしています」

社内のメンバーに対しても、佐川の姿勢が変わることはありません。密にコミュニケーションを取るようにしていると言います。

佐川「メンバーが困っていたら助けたいし、私も困っていることがあれば助けてもらいたい。ほかの人も言っているかもしれませんが、クレスコ社員はとにかく人が良く、助け合いの精神が浸透していると思います」

「UXデザインの部署がある」クレスコに出会い、入社。希望通り、開発→デザインへ

▲UXデザイン勉強会にて(佐川は写真右から3番目)

 

佐川がUIやUXなどの“デザイン”に興味を持ったのは学生時代だと言います。

佐川「もともと都市空間のデザインに興味があり、大学では都市計画などをテーマにしている教授のもとで指導を受けました。そのときに出会った『誰のためのデザイン?』という本が興味を強めたきっかけです。デザイン界では有名な本で、教授に薦められて読んだのですが、世の中のものは人間の特性を考えてデザインされ、つくられているということに改めて気づきました」

所属は経営工学部で、プログラミングも授業で学んでいた佐川。就職先は学んだことを活かせるIT業界に絞って考えていました。

佐川「最終的にはUXデザインの仕事をしたいと思っていましたが、その前にまずは開発を経験したく、SIerを探していました。

 

私が出会えた企業の中で、クレスコだけが唯一『UXデザインの部署があるSIer』だったんです。ここでなら開発もデザインもできると考えて入社を決めました」

入社後、佐川はまず旅行系システムの設計や開発を担当しました。

佐川「携わる人数の多い、規模が大きい案件でした。人数が多いと、それだけ大きなシステムをつくれますが、いろんな立場の方がいる中で、しっかりと認識を合わせていくのも大変です。技術や業務の進め方など、さまざまな学びのあった案件でした」

入社2年目には、同じ業界の顧客向け案件担当部署に異動。小さい開発チームのリーダーを任されました。

佐川「案件や役割は変わりましたが、1年目と同じことでつまずかないようにコミュニケーションの頻度を多くしたり、後工程のことを考えて対応したりするなど、経験を活かすことができたと思います」

業務と並行して、継続してUXデザイン関連の取り組みを続けた佐川は、2019年にEXDCに異動しました。

佐川「自主学習もしていましたし、周囲にも『いつかUXデザインに携わりたい』と継続的に伝えてきました。

 

また、UXデザインの知識はどの案件でも活用できると思っていたのと、『みんなで勉強したほうが意味のあるものになる』と考え、入社2年目から若手メンバーを集めてUXデザイン勉強会を開催していたんです。EXDCの先輩社員に講義をお願いしたり、自分でワークを考えたり。そうした自主的な活動が認められたのかもしれません」

自分で考え、ときには正しく疑い、ユーザーに寄り添う

▲合宿ワークショップでのファシリテーター集合写真(佐川は写真中央)

 

佐川がワークショップのファシリテーターを担当し始めたのは、EXDCに異動して2年後の2021年からでした。

佐川「社内の勉強会などで講師をすることも多かったからか、ファシリテーターに抜擢されました。ワークショップ自体はもともとあったものでしたが、お客様のニーズや課題に合わせて設計するので、準備には時間がかかります」

佐川が担当するワークショップの頻度は平均すると1年に5~7回。その中でも佐川にとって最も印象的だったのは、2022年の夏に実施した“合宿ワークショップ”でした。

佐川「テーマは、金融業界のお客様の『次期中期経営計画に向けた新サービスの検討』でした。

 

普段のワークショップはオンライン実施なので、初めてのリアル開催、しかも合宿形式で行ったこと自体が印象に残っています。準備や設計はいつも以上に大変でした」

しかし、その分濃密な時間にできたのでは、と佐川は手ごたえを感じています。

佐川「リアルタイムで直接参加者の反応を見られたことは、クレスコとしても有意義だったと思います。

 

また、ワークショップの中でサービスの種として生まれたものが、実際に実現に向けて動き始めていると聞いています。参加者であるお客様にとっても有意義な時間になったことがとても嬉しかったですね」

いちメンバーからリーダーへ、そしてファシリテーターという、さまざまな立場を経験した佐川ですが、心情に大きな変化はなかったと言います。

佐川「メンバーだったころから、『自分で考える、ときには正しく疑う』ことを意識してきました。

 

新人のときは、まず指示されたことを実施することから始まりますが、『言われたからやりました』ではなく、『なぜこの作業をするのか』を自問自答していました。その方が、より良いものをつくれるので」

UXデザインに関しても同じだと、佐川は続けます。

佐川「UXデザインで重要なのは、ユーザーにどこまで寄り添えるか。そこが、UXデザイナーの介在価値だと思っています」

組織としても個人としても、めざすのは、提供価値の向上

▲サービスデザイン支援ワークショップでファシリテーションをする佐川

 

佐川は、希望していたUXデザインの仕事に携わるようになった今、ユーザーと関わりながら、ユーザーのことを考えて製品をつくることに、改めてやりがいを感じていると言います。

佐川「『こういうものが欲しいです』と言われてそれをつくるよりも、本質的な価値(ユーザーが本当に欲しいもの)を理解して、それを実現する、という方が、私にとってはモチベーションが上がるんです」

一般消費者向けの製品に携わった場合は、新しい発見がありおもしろい、と続けます。

佐川「ネット上のレビューやユーザーインタビューなどでユーザーの反応を見ることができるので、『こんな使い方もあるのか』など、思いがけない気づきもありますし、次の改善にダイレクトにつながります」

そんな佐川は今後、サービス提供価値をもっと高めていきたいと言います。

佐川「現時点でのクレスコのUXデザインの特色は、開発部門があるので、開発視点も踏まえたデザインができること。そのような、『クレスコだからできる価値』をもっとつくっていきたいですね」

強みを伸ばしていきたいという思いは、自分自身も同じです。

佐川「人やもののインタラクション(相互作用)を促し、それを通じて新しい発見を生み出すことが好きなので、今後も続けていきたいです。

 

さらにそれを“私”がやる意味を持っていたいです。ワークショップのファシリテーターにはなっていますが、まだ発展途上。自分の強みや特色を磨いて、『だから佐川にお願いしたい』と言ってもらえる存在になりたいですね」

自分を高めるにあたって、クレスコはいい環境なのでは、と佐川は分析します。

佐川「クレスコには魅力的な人がたくさんいます。そういった人たちに囲まれて、チームワークを持って仕事ができるのは魅力的だと思います。

 

風通しも良いと思っています。やりたいことを実現するサポートもしてくれますし、だから私は今UXデザインに携わっているんです」

佐川はこれからも、より良いものをつくり出すために前進し続けます。目の前のユーザーの、組織の、そして自分の“その先”を見据えて。

 

※ 記載内容は2023年3月時点のものです