社内では“エマージングテクノロジーオフィス”の室長、社外では一般社団法人の理事と、さまざまな顔をもつ國井 雄介。携帯電話やデジタルテレビの組込みソフトウェア開発で培った知見を活かし、ビジネスの枠を超えた社会課題解決を目指す國井の、これまでの経歴や転機、大切にしている価値観に迫ります。

社内では室長、社外では理事として、組込みソフトウェア開発技術を軸に活躍

▲インダストリアルビジネス本部 エマージングテクノロジーオフィス 國井 雄介

 

組込みソフトウェア開発のスペシャリストである國井は、2022年からエマージングテクノロジーオフィス室長として、部門運営に携わっています。

「エマージングテクノロジーオフィスは、主に組込みソフトウェア関連の新しい技術を先取りして社内に展開したり、製造業向けシステム開発の新規案件立ち上げをサポートしたりする部署です。メンバーは私を含め6名で、サイバーセキュリティやソフトウェアアーキテクトなど、特定領域に長けたメンバーが集まっています」

メンバーそれぞれ、複数の開発案件にまたがって携わり、技術的なサポートを行っています。國井も部門運営とは別に、自動運転やADAS(自動駐車支援システム)向けのシステム開発案件も担当。PM兼技術サポートとして、プラットフォーム開発やアルゴリズム開発を行っています。

「社外向けの活動として、 “一般社団法人 組込みシステム技術協会(JASA)”にも参加しています。2023年は理事を務めることとなりました。私は2015年からJASAに参加していますが、クレスコにCAS(※)の制度ができたので、より活動しやすくなりましたね」

※ CAS(CRECSO A STARS):CRECSO A STARSの略。クレスコ社内の各部門から選抜された、技術に強みを持ち、社内外でエバンジェリズムを発揮するメンバーが集まる組織

 

JASAは技術研究や展示会の開催、“ETEC”という組込みソフト技術者向け試験を通した人材育成など、多岐にわたる活動を行っています。國井は理事だけでなく、“コモングラウンド委員会”の委員長でもあります。

「コモングラウンドとは、フィジカル(現実)空間の情報をIoTなどで収集し、そのデータを元にサイバー(仮想)空間でフィジカル空間を再現する、“デジタルツイン”と呼ばれる技術を実現するための共通基盤です。

 

コモングラウンド委員会では、IoTを進展させた“Society5.0(※)”を実現するための技術調査や課題解決方法を、組込みソフトウェアからの視点で議論しています。

 

具体的には、コモングラウンド、デジタルツイン(フィジカル空間からデータを収集し、コンピュータ上でモデルとして再現する手法)、デジタルライフライン(デジタルを活用したサービス提供に必要なハードウェア、ソフトウェア、ルール)などについての調査や、フィジカル空間とサイバー空間を接続する際の、組込みソフトウェア側の役割や産業横断のデータ連携などについて調査、研究しています」

※ Society5.0:日本政府が掲げている、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

デジタルテレビの進化と共に、自身の役割も変化

▲2018年、当時の中期経営計画を振り返る社内オフサイトミーティングで発表する國井

 

大学でソフトとハードの両方を学び、最初の会社ではハードウェア開発に携わっていた國井。「ソフトウェアの世界も見てみたい」という気持ちが転職のきっかけでした。

「転職先を考えるにあたり、メーカーの子会社など、組込みシステム開発だけをやっている会社で働くイメージが湧かなかったので、独立系のSIerに絞って転職活動を行いました」

最終的に、事業内容が幅広く、いろいろなことに挑戦できると感じたクレスコに國井が入社したのは2005年のこと。

「入社後は官公庁・自治体向けの集配信システムや携帯電話の組込みシステム開発を経験しました。携帯電話の案件はいわゆるガラケーの、ミュージックプレーヤーまわりの開発を担当しました」

その後國井は、その後長期間携わることになる、デジタルテレビの組込みソフト開発案件に参画します。

「参画したのは2009年で、2年後にはアナログ放送が終了、地上デジタル放送に完全に移行する、というタイミングでした。

 

この案件には2017年までの約8年間参画していたのですが、その間にデジタルテレビは大きく変化していきました。コンポジット入力がHDMIに切り替わり、3D表示ができるようになり、画質が4Kになり、プラットフォームがAndroidに切り替わり……。そういうテレビの進化に携わることができました」

8年間で、國井自身の立場も変わっていったと言います。

「担当範囲も広がり、チームの人数も多くなっていきました。私自身は、当初はメンバーから入ったんですが、サブリーダーやリーダーを経て、最終的にはPMを任せてもらいました。

 

PMのときはメンバーが40~50名の大所帯になり、私は各チームのリーダーから情報共有を受ける形でした」

國井は育休を取得するタイミングでデジタルテレビの案件から離任。育休復帰後は、現在も携わっている自動運転・ADAS(自動駐車支援システム)向けのシステム開発に参画することになります。

社外に踏み出して得た、知見とつながり

▲2023年、ものづくりイベントにてコモングラウンド委員会の活動について発表する國井

「デジタルテレビ案件のお客様の社内で、自動運転やADASの案件を立ち上げるということで、お客様から声をかけていただいたことが案件参画のきっかけでした」

内容としては、自動運転に関する技術の研究開発という、デジタルテレビ案件とは全く違う案件です。

「そもそも自動運転システム自体新しくて、難易度が高いものなんです。今でも、どの企業も勉強しながら研究開発を進めている状況です」

そのころには既にJASAに参加していた國井。参加のきっかけは当時の上司からの紹介だったと言います。

「そのときはデジタルテレビの案件にいましたが、『このままデジタルテレビを突き詰めていくだけで良いのか?』と思っていたのでちょうど良いタイミングでした」

そして、想像以上の気づきがあったと続けます。

「テレビ以外のいろんな分野で、さまざまな技術があることを目の当たりにしました。『もっと幅広い範囲のことを、自ら動いてインプットしなければならないんだ』と思いましたね」

そうしてJASAに参加し、コモングラウンド委員会の前身の “IoT技術高度化委員会”に入ったところ、いきなりワーキンググループの主査を任されたと言います。

「ワーキンググループの活動発表だけでなく、展示会でデモをするとか、Webの記事を書くとか……。初めてのことをたくさん経験させていただきました。

 

でもそうやって『こういう活動をしています』と発信すると、自然と情報が集まってくるんです。近しい業務をしている方から『うちの会社でもやってます』『こんな記事がありましたよ』と教えていただくことがあります」

ほかにも、いち企業ではなく社団法人だからこそ、「うちの大学の施設を使っていいですよ」と大学教授から言ってもらえることもあったと言います。

「業務での開発案件からは得られなかった知見や人とのつながりが増えましたね。自分としてもいろんな意味で大きく変わった、印象深い出来事です」

「とりあえずやってみる。間違っていたら修正する」──今後も挑戦は続く

▲2023年、JASAのイベントで講演する國井

 

分野や社内外を問わず幅広く活動する國井には、一貫して大切にしている価値観があります。

「『とりあえずやってみよう』と思っています。やり方が間違っていたのなら修正すれば良いですし、いろんな価値観があるのであれば受け入れれば良いと考えています。

 

室長も理事も、ありがたいことに声をかけてもらって就任しましたが、『やらないよりはやった方が良い』という考えから、依頼はできるだけ断らないようにしていますね。とりあえずやってみて、大変だったらそのときにどうするか考える、というスタンスです」

ほかにも、“新しいこと”も自分の中での共通項だと続けます。

「新しいことをするのが好きなんです。テレビの案件も立ち上げからでしたし、もっと遡ると大学もそうでした。新しい大学に行きたくて、1期生として母校に入学しました。当時としては珍しく、ソフトとハード、どちらも学べる学科があるということも大きかったです」

今後は、よりクレスコのビジネスに直結する活動を意識していきたいと言います。

「私がこれまで行ってきた活動は、自分の知見や経験を増やすことが中心で、結果的にある種の自己満足だったと思っています。もちろん有意義で貴重な経験ではありますが、よくよく考えてみるとクレスコのビジネスとは少し外れていたりして、得た知見を社内にうまくフィードバックできているかと聞かれると疑問に思うことがあります」

この状況を打破するために、國井は今後、別のメンバーにもJASAの活動に参画してもらいたいと考えています。

「すでに新規参画してくれたメンバーもいるのですが、もっとメンバーを増やして、展示会への出展を経験してもらうとか、いろんなつながりをつくるサポートをしていきたいですね。

 

そして私は、私個人の活動の割合を減らし、“クレスコのビジネス”を意識した、今後の活動内容やその方向性を検討する割合を多くする方にシフトしていきたいです」

フットワーク良く、新しいことにチャレンジし続けてきた國井。あとに続くメンバーの道しるべとなるべく、これからも挑戦をし続けることでしょう。

 

※ 記載内容は2023年9月時点のものです