CRESCO RECRUITING NAVI HOME サイトマップ 問い合わせ

日本では、まだあまり知名度の高くない“機能安全”。これはもともと石油化学や原子力発電といったプラント制御分野で生まれた考え方で、現在では国際規格化されて制御装置を搭載する産業機器、鉄道システム、航空機、自動車、医療機器など、クリティカルな領域を中心とした開発分野で適用が始まっている。たとえば踏切を例にとると、電車の接近を感知して遮断機を下ろす機能や、線路に障害物があれば電車が自動的にストップする機能も“機能安全”にあたる。
近年、制御分野ではハードとソフトが複雑に絡み合って構成されることで、未知の突発的なトラブルが発生するようになった。こうした背景から、確率や統計学をもとに危険リスクを許容レベルにまで低減させる機能安全規格が重視されるようになり、欧米ではすでに規格化されていて、認知度は高い。
クレスコでは組込みソフトウェア開発において多種多様な制御システム開発の技術力と実績を買われ、機能安全に準拠したプロセスの策定やその導入支援に、かなり早い段階から参画していたのだという。

「 “機能安全”をやってみないか?」
上司から新たな仕事の打診を受けたAだったが、入社から3年間、カーオーディオの組込みソフトウェア開発に打ち込んできたAにとって、日本でまだメジャーではない“機能安全”が自分の仕事とどう関わってくるのか、このときは想像もつかなかった。
「これは某自動車メーカーの品質を担当する部署からの依頼でした。日本のみならずグローバルに展開している自動車メーカーにとって、欧米に自動車を輸出する際には、この“機能安全”の国際基準を満たしている必要があるんです。そのため、これまで組込みソフトウェア開発で多彩な実績のあるクレスコに、第三者の立場として、電子制御における開発・製造プロセスが“機能安全”の国際基準を満たしているかどうかを監査(チェック)してほしいというものでした。」
とはいえAにとって、これまで経験してきた開発の仕事とはまったく違う未知の領域。まず渡されたのが、ISO(国際標準化機構)26262という全編英語で書かれた、かなり膨大な規格書だった。それをひたすら読み込むことで、設計や開発に留まらない多岐にわたる知識が必要であることを初めて知らされたのだという。さらに必要なのが、これを適用する自動車メーカーの知識だった。
「私はブレーキ設計の担当でしたが、自分の担当領域だけを理解すれば済むものではありません。数万点にのぼる自動車部品を統合・制御するためのシステム内容や背景、開発プロセスの把握、部品単位での厳格な管理ルールや開発する組織の構成にいたるまで、広い視野で開発を見渡す必要があるため、まずは自動車を1つのシステムとして捉えて、全体を把握する努力をしました。やるからには中途半端はイヤ。分厚い英語の規格書と格闘しながら、担当者をつかまえてこれまでの仕事の流れを聞き…、こんなにガムシャラに勉強したのは大学受験以来かもしれませんね(笑)。」

「当時、私はまだ入社4年目。開発には自信がでてきた頃でしたが、自動車の中でも安全の根幹を握る“ブレーキ”の開発プロセスを自分の責任と判断でお客様と折衝しながら進めるというのがこの仕事。当初は自分がその責務に応えられているのか自問することも少なくありませんでした。」
この仕事のゴールは、自動車におけるブレーキ設計・開発における機能安全に準拠したプロセスを策定すること。具体的なアウトプットとしては、国際規格に則ったチェックリストやガイドラインの作成。その作成のために、各部署の業務フローの分析はもちろん、部品の仕入先へ赴いて状況を調査することもあったという。なかでも困難を極めたのが、ISOの解釈。ISOに定められた規定は法律と似たところがあり、異なる解釈が成り立つ場合があるのだという。
「毎回、プロジェクトメンバー全員でチェックポイントとその解釈について議論を重ね、その結果を私がお客様にお伝えしていきます。そこでは、これまでのお客様のやり方と規格に遵守したやり方について、その違いや意図をうまく伝えられずに意見が衝突したり、ときには突き返されたこともありました。大事なのは対話。機能安全を保証するためのツールになるのですから、誤解のないように規格の本質を踏まえて私たちの解釈を説明し、1つひとつ丁寧に示していくことで、お客様の姿勢も前向きになっていきました。さらに最終的なアウトプットはドキュメントになるため、つくっては直し、またつくっては直す。文章の『てにをは』にまでこだわり抜くような地道な工程を繰り返していき、体系立ったルールが確立されるまでの一連のプロセスを経験することができました。」
プロジェクト開始から丸2年経て、このプロジェクトは完了を迎えることとなった。
「最後にお客様から『あなたのおかげで、本当に助かったよ。ありがとう』という言葉をいただき、そこまでの苦労も辛かったこともすっかり忘れて、やってきてよかったなと心から思いました。」

お客様からの言葉が社交辞令でないことは、次のプロジェクトを依頼されたことからも明らかだった。Aが次に取り組んだのは、ここ数年、衝突事故防止のために搭載されるようになった前方障害物を検出する装置の機能安全だ。
「このプロジェクトでは、約10ヶ月かけて開発に関わるドキュメントやコードを解析して、エラーが発見されればメーカーへ報告するという形で進められました。ここでは、機能安全規格の策定において、FMEA(潜在的故障モード影響解析)という手法を用いて、潜在的な故障の分析を行うという取り組みも導入しました。今回は前回と比べて規模も大きく、海外メーカーをも巻き込むような規模を無事完遂できたことで、大きな自信がつきましたね。」
そして、この自動車メーカーのサプライヤの業務におけるクレスコへの信頼は確固たるものになり、現在では海外に生産を委託しているソフトウェアの監査を任されている。
「現在のプロジェクトでは、お客様が海外に外注された車載ソフトウェアプラットフォームが機能安全として適切かどうかを調査しています。何をどう進めていくか、機能安全の本質を踏まえてどんな提案や改善を示すか。これらを自ら考えてお客様とチームを牽引し、新たな枠組みをつくりあげていくプロセスは、コンサルタント的な側面も強いんです。一人の専門家として開発現場や開発トップの声と向き合い、ITという枠を超えた多くのことを学ぶことができるのは、この仕事の大きな魅力の1つですね。」

組込みソフトウェア開発エンジニアから、機能安全のエキスパートへ。Aにとってはゼロからのスタートとなったが、これまでの機能安全プロジェクトをやり遂げた今、この仕事の社会的意義やビジネスとしての可能性を強く感じている。
「安全・信頼が重視される日本にとって、それを保証する“機能安全”が必要な領域は広がっています。たとえば介護用ロボットやパーソナルモビリティといった新市場においてもビジネスチャンスは大いに期待できますよね。日本ではまだ“機能安全”の普及期ではありますが、クレスコはその導入支援として必要とされる場面も多く、そこをサポートしてお客様の企業価値を上げることが私のミッションであり、ひいてはそれがクレスコの新たな企業価値になると思っています。」
今回の自動車メーカーにおいて、Aは機能安全の第一人者として頼りにされる存在となり、チームメンバーも少しずつ増えてきた。今後はより一層、後進の育成に力を入れていくのだという。
「今は、お客様のより前面に立って、より大きなプロジェクトを牽引する役割も求められています。それには一人の力では限界がありますから、メンバーを育て、チームを引っ張っていかなくてはなりません。責任の重さも感じますが、機能安全はこれから大きくなっていく市場。その市場を開拓することができるのは、自分に与えられたチャンスだと思っています。」
モノづくりを志してITの世界に飛び込んだAにとって、機能安全の仕事はまったくの想定外。でも今は、「自分はこういう仕事がしたかったんだと思う」と笑顔で語っていた。

※内容はインタビュー当時のものです。

ページ TOP