クレスコRPA事業の第一人者として、コンサルティングから開発まで、幅広く事業を牽引する吉田 将明。技術ブログの投稿や書籍の出版を通して、社外からも高い評価を受けています。そんな吉田のターニングポイントや、大切にしている価値観、そして実現したい世界観を紐解いていきます。
▲デジタルソリューション推進室 シニアデジタルテクノロジーエキスパート 吉田 将明
RPA(Robotic Process Automation:人間がコンピュータを操作して行う作業を、ソフトウェアによる自動的な操作によって代替すること)の領域を主に担当している吉田は、RPA関連ソリューションの企画開発や販売戦略立案、プリセールス、コンサルティングなどを行っています。
吉田:「当社がRPAに携わり始めた2017年当初は、お客様の業務を自動化するRPAプログラムを開発するのがメインでした。ですが、日本では徐々に、プログラミング経験のない社員が自分で自分の業務を自動化する“市民開発”が増えてきました。
それに伴い、RPA推進を行っているお客様の最近の課題も、『市民開発ができる社員をどう増やすか、社内にRPAをどう浸透させるか』に変化しました。そのため、当社も現在は、お客様社内でのRPA活用推進支援や、プログラミング経験がない方向けのRPA教育支援サービスを幅広く展開しています」
世の中の流れや顧客のニーズに合わせて、提供するサービスも変えていく。吉田はこれらRPA関連のサービス企画や販売戦略立案の指揮をとっています。
吉田:「2022年5月には、RPAをはじめとする“自動化”の技術を学べる、クレスコ独自のe-learningコンテンツの提供を開始しました。2023年11月現在、40社以上、400名以上の方々にご利用いただいています」
このようにRPAを広めるために幅広く活動している吉田は、2023年にCAS(※)にも選ばれました。
※ CAS:“CRESCO A STARS”の略。「最高の技術・スキル」でクレスコを代表する社員を会社が認定する制度。認定された社員は、会社の持続的な成長に向け、社員・会社・ビジネスに影響を与える役割を担う
吉田:「もともと社内の技術コミュニティの運営や、社外での講演なども行っていました。
RPAに関することとしては、2018年からクレスコの技術ブログ内でRPAに関する記事を書きはじめて、もう少しで連載100回目に到達します。社外の方から「ブログ読んでます」と声をかけていただくことも多く、一定の認知度が得られたのかなと思います」
2022年からは、早稲田大学で社会人向けのリカレント教育(※)の講師としても活動しています。
※リカレント教育:職場や学校教育での社会人の学び・学び直しのこと。
吉田:「ITに関する実践的な内容を学んでもらう教育コースで、“セキュリティ”“AI”など、さまざまな分野をそれぞれの専門家が講師となって教えています。私は2022年から“RPA・ノーコード”の講師を担当していて、これまでのセミナー登壇や技術書の執筆などの実績を評価いただき、お声がけをいただきました」
▲Xamarinに関する発表を行う吉田
2013年にクレスコにキャリア入社した後、吉田は.NETアプリやモバイルアプリの開発に携わりました。当時参加したイベントが、吉田のその後のキャリアに大きな影響を与えることになります。
吉田:「2014年頃、エンジニア向けの社外イベントに参加しました。そこで、当時新しい技術だった“Xamarin(ザマリン:iOSやAndroid向けのモバイルアプリをC#というプログラミング言語で開発できるクロスプラットフォーム開発ツール)”を知りました。
Xamarinは当時としては画期的なツールで、『新しい技術でこんなことができるようになるんだ』『こんなふうに新しいビジネスが広がっていくんだ』と、とても感動したことを覚えています」
業務の世界から飛び出し、新しい技術に出会ったことで、自分自身も変わっていったと吉田は続けます。
吉田:「それまでの私は、技術を業務の一部としか捉えていませんでした。でもそのイベントに参加して、『自分もこうやって新しい技術を広めていける存在になりたい!』と思ったんですね。自分の中に新しい風が吹いたというか、大きな転換点になったのは間違いないと思います」
Xamarinに関わりたいという想いを強く持っていた吉田ですが、当時は新しい技術だけあって、情報量が少ない状態でした。なので、まずは社内の有志を集めたXamarinに関する知見を高めるワーキンググループをつくったと言います。
吉田:「ワーキンググループ内の知見がある程度高まったところで、社外のイベントに登壇者として参加し、集めたXamarinの知見を発表しました。その中で、クレスコや私を『いいね』と言ってもらえるようになって。アウトプットすることや、新しく何かを始めることをもっと続けようと思ったきっかけでした」
そんな吉田がRPAに出会ったのは2017年のことです。
吉田:「当時はRPAが国内で盛り上がってきた時期でした。今後伸びるだろうという感覚がありましたが、現実もそうなりました。当初私はXamarinとRPAをどちらも担当していましたが、RPAのお客様からの引き合いや、業務の比率がどんどん大きくなっていきましたね」
▲UiPath Japan MVP 2023として表彰式に参加に登壇する吉田(吉田は後列一番左)
RPAに本格的に携わり始めた吉田ですが、Xamarin同様、当時はRPAに関する情報が限られていたと振り返ります。
吉田:「情報がなかったわけではないのですが、『RPAはこうやって進めていくべき』というスタンスに関する情報がほとんどで、RPAの開発技術に関する情報がほとんどない状況でした。
なので、RPAの開発に関する情報をアウトプットしていけば、『クレスコがRPAに強い会社だ』という認知が広がるのではと考えました」
そして吉田は、前述のクレスコ技術ブログで、一人でRPAに関する記事の連載を始めました。
吉田:「業務としても、RPAに関する引き合いが増え、徐々にチームが大きくなっていきました。2018年にはエンタープライズ自動化ソフトウェア“UiPath”を提供しているUiPath社様とリセラー契約を結び、クレスコのRPAビジネスもより拡大しました」
一方で、吉田のアウトプットの機会も増えていきました。
吉田:「2020年にはUiPathの技術書を出版しました。出版してから数年が経過しましたが、何度か重版がかかり、多くの方が私の執筆した書籍で学んでいただけたようです」
吉田が2023年に参加したUiPathユーザーイベントでは、「この本にとても助けられました。本当にありがとうございます」と言って、ボロボロになるまで使い込まれた本を見せてくれた読者がいたと言います。
吉田:「初めての経験だったので、すごく嬉しかったですね。残念ながらサインまでは求められませんでしたが(笑)。
この本の執筆のきっかけがRPAのブログ記事でした。ブログを読んだ出版社の編集者の方からお声がけいただいたのです。アウトプットが、キャリアやつながりを引き寄せてくれました」
吉田は、RPAに携わるうえで大切にしている想いがあると言います。
吉田:「私がRPAに出会った頃は今よりもっと敷居が高く、ITエンジニアでなければ扱えない、難しい分野でした。
でもそれは、すごくもったいないと感じていて。いろんな人が、自分の業務を自分自身で改善して効率化できる世界を作りたいです。この想いは前から変わっていませんし、私のアウトプットの原動力です」
▲ラスベガスで行われたUiPathイベントにて、グローバルUiPath MVPと交流する吉田(吉田は一番右)
吉田は、RPAの今後についてこう予測します。
吉田:「今後も変わっていくと思います。RPAツールはここ数年ですごく進化し、単純な業務の自動化は難なくこなせるようになってきました。私が主に携わっているUiPathも、より広範囲に、ビジネスプロセス自体の効率化を推進するソリューションに進化していて、“RPAツール”ではなく“Automation Platform(自動化プラットフォーム)”という表現をしています。
加えて、2023年は“生成AI”が大きな注目を集めましたが、RPAにもその影響がやってきています。『来週の出張の新幹線とホテルの手配、あと社内申請もお願い』とロボットアシスタントに依頼すると、AI×自動化でこれらをこなしてくれる世界がすぐそこまで来ています」
そしてその変化を引き続きアウトプットしていきたいと、吉田は続けます。
吉田:「今後も新しい技術によって働き方が変わっていくと思いますが、技術の側面だけでなく、『働き方をどう変えていけるのか』『そうした新技術を社内でどう活用し、浸透させていくのか』などを意識して情報発信を続けたいです。
そうして流通する情報が多くなれば、エンジニアではない職種の人の自動化の助けになったり、『こんなものもあるんだ、やってみようかな』という気づきが生まれるかもしれませんよね」
そんな吉田は、いち社会人として意識している点もあると言います。
吉田:「『誰に対してもオープンであること』と、『自ら率先してチャレンジし、ビジネスをリードすること』を意識しています。
以前は技術力を高めることに重きを置いていました。でも、どんなに技術力が高くても、どんなに尖った技術でも、それがビジネスにつながらないと、規模は大きくなりません。
今は自分のやりたいことを軸にしつつも、『それをどうビジネスにつなげるか、私や当社がその領域において、一定のポジショニングを取れるか』という考え方に変わりました。自分の立場が変わったこともあるかもしれませんが、そういうことを考えるのが楽しいということも大きいです」
ビジネスを考えるうえでは、メンバーも不可欠だと続けます。
吉田:「前は自分一人でやっているような感覚でしたが、今はその感覚は全くありません。RPAのブログ連載も、今や10名で持ち回り連載ができるほどになりました。
現在は、さまざまなメンバーと一緒に、常に新しい挑戦をしています。私と同じようなキャリアを目指すのではなく、それぞれがやりたいこと、成し遂げたいことを考え、挑戦してもらいたいです。
なので、私の役割は、メンバーがやりたいことができる機会を作ったり、仕事を獲得したりすることだと考えています」
やりたいこと、目指すものを実現するために、自ら進んでいく吉田。関わる人や社会をより良くするために、これからも進んだ先でアウトプットを続けていくことでしょう。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです。