クレスコに中途入社し、長岡事業所で管理職を務めている佐野 寿之。組込みソフトウェア開発を行いながら、社内での動画ナレッジ配信チーム“クレTube”の活動を行うなど、組織全体の底上げを目指して、後進の育成にあたっています。そんな佐野が、“クレTube”の取り組みや、人材育成にかける想いなどを語ります。

全社員が学び合う文化をつくりたい──“クレTube”誕生秘話

▲第一エンベデッドソリューション事業部 長岡開発センター デジタルテクノロジーエキスパート 佐野 寿之

 

クレスコの長岡事業所のミッションは、製造業・自動車関連メーカー向けのITサービスの提供を通して、顧客との関係強化を図ることです。

 

佐野 寿之は、2017年にクレスコに中途入社しました。長岡事業所の社員や、遠隔作業をしている品川本社の社員、協力会社のメンバーを含めた、約60名のメンバーと協力して業務にあたっています。

佐野 「長岡事業所は、自由で堅苦しくない雰囲気です。プライベートではスキー、スノボ、海など、自然のアクティビティを楽しんでいる人も多いです」

佐野が担当するのは、車載メーター機器のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)開発。PMとして携わっています。 

佐野 「車のスピードメーターは、数年前からデジタルメーターに替わっています。液晶画面の中で、指針、燃料計、走行距離などをグラフィックス表示しています。物理的なメーターがデジタル化していってるんですね。最近は3Dグラフィックスを使用することでデザイン性が高まり、ゲームのような演出も可能なんですよ」

佐野は、チームマネジメントだけではなく、メンバー育成においても期待されています。

佐野 「直接コミュニケーションできるメンバーには、業務を通じて育成をはかっています。今は、品川本社のメンバーとは直接会って話すことができませんが、毎月提出されるWebの報告書を読んで、メンバーが頑張っていることや悩んでいることを把握し、報告書のコメントや面談でアドバイスしています。

面談ではそのメンバーへの期待のほか、社会人として、技術者としてのあり方も伝えるように意識しています」

そんな佐野が、自らのナレッジを会社全体で共有するために始めたのが、“クレTube”と名づけた社内向けの動画配信です。

佐野 「『社員の誰もが発信者になれる』、そんな思いを込めて“クレTube"と名づけました。既に社内外で発信をしている社員もいますが、発信をしていなくても、光るナレッジを持つ社員はたくさんいるはずだと考えたんです。

 

そこで、『私の経験や知識を動画の形で伝えられたら』と思ったのがきっかけです。私自身、直接会うことができない社員からも学びを得たいと思っていました。全国の社員がそれぞれ互いに知識を伝え、学び合う文化をつくりたいと思ったんですよね」

佐野が始めた“クレTube”は、2021年7月現在4名で活動しており、社内の“クレTubeチャンネル”(※)に動画を投稿しています。佐野は30本程度の動画を配信。ほかのメンバーが担当した分を合わせると、これまでに60~70本もの動画が配信されています。

 

※職場アカウントにサインインしたユーザー限定の動画チャンネル

工夫すればできる──価値観を形成したのは、ある成功体験だった

▲長岡事業所のBBQ懇親会を楽しむ佐野(写真一番左)

 

佐野は前職の大手メーカーで、映像機器部門のシステムアーキテクトとして、機器を制御する装置に組み込まれるソフトウェア全体の設計を任されていました。そのときの成功体験が、仕事における価値観の形成につながったといいます。

佐野 「開発を指示された製品が、これ以上ないくらいのスペックを出さなくてはいけないようなものだったんです。理論上は可能でも、実現は難しいものでした。でも、上司と2~3カ月間、夜遅くまで調査、検討、試行錯誤を繰り返し、常識を捨てて色々な手を尽くしてみた結果、実現できてしまったんですよ(笑)。

 

『無理だと思われていることも、工夫することでうまくいくんだ』と実感できたことは、私にとって大きな成功体験となりました」

その後佐野には、上には上がいる、ということや、IT技術者としてやらせてもらえることの限界を感じる時期がありました。その時に勢いで転職サイトに登録したことをきっかけに、クレスコと出会います。

佐野 「転職サイト上でのスカウトメッセージで、クレスコを知りました。耳触りの良い言葉が多く、最初は疑わしく感じましたが(笑)、『上場企業だし、話を聞いてみよう』と思いました」

比較的軽い気持ちで面接に進んだ佐野でしたが、面接官の言葉を聞き、入社を決めます。

佐野 「『長岡事業所の今後の業務拡大に向けて、管理職のPMが必要になる。組織力強化のため、一緒に管理職を目指してほしい』と言われたんです。

 

私はこれまで、『自分は技術者だ』と考えていましたが、PMとしての職能を期待されたとき、自分の中に新しい可能性があることに気が付きました。また管理職として人を育て、組織を束ねていく仕事も魅力だと感じたため、入社を決めました」

佐野がPMを目指したのは、佐野が師と仰ぐ、前職の上司の言葉の影響でした。

佐野 「『君が頑張れば、3人分の仕事ができると思う。だけど、どんなに頑張っても、君ひとりでは3人分の仕事しかできない。君が持っている知識を広めて、その知識を持っている10人でチームを組んだら、30人分の仕事ができるかもしれない。ひとりでやると小さな仕事しかできないから、多くの人と大きな仕事ができるようになってほしい』と言われたことがあるんです。

 

この言葉が私のキャリアの軸となっています。クレスコは、私が入社した2017年当時、社員数は1,000人強でした。『ナレッジをうまく伝えることができたら、すごい組織力が発揮できるんじゃないか』と思いました」

失敗を機にマインドリセット──見えたものは、PMとしての立ち位置

▲長岡事業所でのオフサイトミーティングの集合写真(佐野は写真最後列左から2番目)

 

佐野は、クレスコ入社翌年の、2018年に管理職になりました。しかし、そこでコミュニケーションの壁にぶつかります。

佐野 「メンバーが苦戦していた作業が、私にとっては簡単なものだった際に、『なぜこんなことができないのか』という言い方をしてしまう時があったんです。自分基準で考えてしまい、結果メンバーとの間に壁が生まれ、悩みました。

 

そこで、いったんマインドをリセットすることにしました。これまでの技術者としての視点は一切捨てて、『今は人を動かすことが仕事であり、メンバー目線でよく考えて話す』という、PMとしての視点に切り替えたんです。

 

技術者とPMでは、求められるスキルが全く異なります。なので、私にとっては大きな転換です。実際、切り替えには苦労しました」

そこから、マネジメントやコミュニケーションの勉強に明け暮れ、今でも勉強を継続している佐野。「やっと管理職としての仕事ができるようになってきたのでは」と自己評価していると言います。

佐野「コミュニケーションで言うと、メンバーが詰まっていることに対して、私は回答が分かっていても、直接的に答えを伝えてしまうと成長につながりません。その時は、『どんな表現をすれば、メンバーが自分で答えにたどり着けるか』と考えて、言葉を選んでいます」

そんな佐野には、最近“うまくいった”と感じたことがありました。

佐野 「入社3年目くらいのメンバーが、他のメンバーに対して説明をしている時に、日ごろ私が使っている言葉を使っていたんです。『自分が伝えたいメッセージが届いたのかな』と感じました。

 

アドバイスって、なかなかすぐには伝わらないものだと思います。でも、何週間、何カ月か経ったときに、アドバイスを実践して、メンバーが成長していることを感じられると、とても嬉しいです」

経営ビジョン達成に向けて──ナレッジがつなぐ成長のバトン

▲動画撮影を行う佐野。編集も自分でこなす

 

佐野はクレスコの、自由でやりたいことができる環境に魅力を感じています。 

佐野 「入社後、随所でクレスコは自由な会社だと実感しました。自由であるがゆえに、自分を律して行動する必要はあります。でも、やりたいことを実現できるのは大きな魅力ですね。

 

例えば、私はクレスコ入社後、すぐに社内の技術コミュニティに参加して、技術レベルの高い人から多くの刺激を受けました。この技術コミュニティも、“クレTube”同様、社員の声でつくられたものです」

ビジネス上、指示を受けたことや、直接的にお金になることが優先されるのは、どうしても起こること。その中で「社員の“やりたい”を叶えてくれる会社は、意外と少ないのでは」と思っていたと、佐野は言います。

佐野「でも、クレスコは違います。クレスコは社外セミナービジネスもあるのですが、飲み会で専務に『セミナー講師をやりたい』と伝えたことがありました。すると、数か月後にセミナー担当者から連絡がきたんです。

 

セミナー担当者と、何ができるかを話し合った結果、生まれたのが“クレTube”です。最初は個人的に発信するだけでしたが、新型コロナウイルスの影響から、動画セミナー自体が増えたこともあり、“クレTube”の注目度が上昇しました。そして活動が社内で公式に認められ、“クレTubeチャンネル”が社内サイトにできたんです。この経緯もおもしろいです。

 

他にも、新潟の学校で行われる会社説明会で、学生さん相手に会社説明をしたり、市民向け学習施設でのセミナーを企画したりしています」

クレスコグループでは、経営ビジョンとして“CRESCO Group Ambition 2030”を掲げています。佐野が見据える先にも、このビジョンがあります。

佐野 「ビジョンを実現するためには、私が過去に経験した、『常識を捨てて、様々な手段を試してみること』が必要になると思っています。だからこそ、私はこのビジョンの実現に挑戦してみたいと感じました。

 

個人で成長するだけでなく、多くの人たちが協働することで、より大きく成長できます。そのためにも、今よりももっと、社員全体のナレッジ共有が活発になってほしいと考えています。

 

ですから、今後も“クレTube”などの活動を通じて、社員の育成に取り組み、組織に貢献していきたいですね」

佐野はこれからも、新しい試みに挑戦し、社員がより成長していける組織風土を築いていくことで、未来へバトンをつないでいきます。

 

※ 記載内容は2021年8月時点のものです