インターネットバンキングシステムの案件でリーダーを務める村上 哲。常に安定稼働が求められるシステムに携わる緊張感の中で、「意見を言いやすい」雰囲気作りを意識している村上ですが、若手時代は伸び悩み、出遅れを感じていたと言います。その状態から脱した転機とは?

▲第一金融ソリューション事業部 プロジェクトスペシャリスト 村上 哲
第一金融ソリューション事業部に所属する村上は、地方銀行向けのインターネットバンキングシステムの運用・保守案件にリーダーとして携わっています。
村上 「複数の地方銀行がこのシステムを取り入れているので、どの銀行でも利用する機能である“共通部分”と、各社それぞれのニーズに応える“個別部分”があり、両方対応しています」
案件の規模が大きく、開発側も多くのチームがあり、他のIT企業も多く関わっていると言います。
村上 「チームは大きく分けるとアプリ側と基盤(アプリが稼働するための土台となるサーバー、ネットワーク、OSやデータベースなどの総称)側があり、クレスコが担うのは後者。システムを使うユーザーからは見えない部分ですが、基盤がなければアプリは動かないので、責任感を持って業務しています」
クレスコからは30名ほどのメンバーが参画していて、クラウドとオンプレミス(自社施設内に機器を設置してシステムを導入・運用すること)のふたつのチームに分かれています。村上はオンプレミス側のリーダーを務めています。
村上 「私のもっとも大きな役割はマネジメント。システム改善や機能追加などの依頼があると、リリース希望日から逆算してスケジュールを立て、メンバーの状況を把握した上で、誰にどの作業を任せるかを整理してメンバーに依頼します」
依頼内容はさまざまで、リリースまで半年かかる大掛かりなものも。そのような大規模案件の場合は、お客様と金額交渉をしたり、エンジニアの増員調整をしたりすることもあります。
そんな村上がリーダーを務める上で大切にしているのは、メンバーの納得感です。
村上 「作業を依頼する際、その作業が必要な背景や目的を可能な限り伝えるようにしています。理由がわからないまま作業するのと、納得した上で作業するのとでは、モチベーションや取り組み方が大きく変わると考えているので」
実際に村上が手を動かすこともあると言います。
村上 「インターネットバンキングシステムは24時間365日稼働しているため、メンテナンスが実施されるのは週末の夜間。負担が偏らないよう、私も対応します。
『止まってはいけない』システムなので、品質は常に最上級でなければなりません。トライアル&エラーを繰り返すことよりも、正確性が重視される業界です。コマンドをひとつ実行するたびに、実行しても問題ないと言えるだけの確かな根拠を持って作業するよう心がけています」

▲大学時代の研究室での一枚(村上は上段中央)
大学時代、村上は理工学部で化学・生命科学を専攻していました。
村上 「なんとなく化学系を学んでみて、就職もその延長で……と考えていましたが、学んでいくうちに『何か違う』と気づきました。なので就職活動では、まずはいろんな業界を見てみようと意識していました」
そんな中で村上がシステムエンジニア(SE)に興味を持ったきっかけは、合同説明会に参加したことでした。
村上 「とある企業のSEの方が、『パソコンと向き合うだけでなく、人と関わることが意外に多い仕事だ』と話すのを聞いて、なぜか惹かれました。中でもクレスコを選んだのは、対話をとても大事にしてくれる会社だったからです。
面接では『入社後はどうしていきたい?』など、ITを学んでいなかった“今まで”ではなく、“今後”どうしたいのかという自分の考えを知ろうとしてくれて、合否関係なく面接後にフィードバックしてくれるなど、学生のことを一人ひとりよく見ながら、誠実に対応してくれていると感じました」
そして2014年に新卒でクレスコに入社して以来、村上はずっと基盤の案件に携わってきました。
村上 「銀行、生命保険、人材派遣など、さまざまな業界の案件を経験しました。他の方と比べて、ひとつの案件に携わる期間が短いケースが多かったと思います」
技術分野は変わらないものの、案件が変わるとルールややり方が変わるので、前の案件で学んだことが次の案件でそのまま活かせることは少なかったと村上は振り返ります。
村上 「案件が変わるたびに『またゼロからキャッチアップしなければ』と、とにかく不安が大きかったですね。ここ2~3年で、ようやく積み重ねてきたものがつながってきたと感じ始めました。若手の時は伸び悩んでいたなと思います」

▲中学時代にバレーボールを始め、今でも社会人チームでプレーしている(村上は上段左から2番目)
村上にとって初めての長期案件は、現在も続くインターネットバンキングの案件でした。最初はサブリーダーとして参画したと言います。
村上 「実際はサブリーダーを経験したことがなかったので、実態としては他の方に引っ張ってもらっている状態でした」
そんな村上の転機は、案件に参画して約1年後に、当時のリーダーに怒られたことでした。
村上 「私の担当業務でトラブルが起きてしまいました。その際、当時のリーダーと『なぜトラブルが起きたのか』『事前に予測し、防ぐことができたのではないか』など、長時間会話しました。
その時に、『村上くんだから、ここまでしつこく聞いているんだよ。君ならできると思うから言っているんだ』と言われたんです」
この言葉が心に刺さったと、村上は続けます。
村上 「当時、同じ年に入社した同期の中にはすでにリーダーをしている人もたくさんいて、出遅れていると感じていました。そんな時にこの言葉をもらって、期待されていることを感じて嬉しくなりました。怒られているのに(笑)」
この一件以来、村上の行動は一変します。
村上 「それまでは指示されたことを間違えないようにこなすことだけを意識していて、品質を高めるための改善など、自分からアクションを起こすことはほとんどありませんでした。
それからは、気になる点があれば自分で調べ、答えが見つからなければ有識者に質問するなど、主体的になったと思います」
行動が変わり、気持ちとしても変化があったと村上は続けます。
村上 「それまでは、やるべきことをやりはしますが、正直つらいと思うことも多かったです。でも“できる”ようになってからは、『この仕事をしていて良かったな』と思うようになりました」
村上がリーダーに就任したのは、その転機から1年後のことでした。

▲先輩後輩問わず、コミュニケーションは大事にしている
村上がリーダーになって約3年。メンバーとの対話を重視しています。
村上 「チームの一体感を大切にしています。メンバーに、いかに同じ方向を向いてもらうかを考えることが多いですね。そのために、対話の時間を長くとってお互いの理解を深めようと意識しています」
目指すのは、メンバーにとって「意見を言いやすい」リーダーです。
村上 「立場に関係なく意見が欲しいのです。リーダーなので方針は伝えますが、変に従いすぎずに、より良いものがあれば遠慮なく提案してほしいし、提案してくださいと伝えています。
結果、『こっちの方が良いと思ったので修正しておきました』とか『こういうふうに進めたいのですがどうですか』という話をしてくれた時は、伝えたかったことが伝わっていると感じて嬉しくなります」
今後もマネジメントのキャリアを歩んでいきたいという村上。そのために技術力が必要だと続けます。
村上 「エンジニアとして、技術を知らない状態でリーダーを務めるのは限界がありますし、個人的には時代も会社も、マネジメントだけを行う人財は求めていないと感じています。
今のチームには各分野の有識者が揃っていて頼もしいのですが、今後は私も含めて一人ひとりの知識や技術を共有、底上げし、チームとしての力を上げていきたいです」
今までの経験を振り返って、自分が楽しいと思う瞬間は、やはり“人”に起因すると村上は言います。
村上 「今回インタビューを受けて過去を思い返しましたが、人と相談しながら何かを決めて、業務や物事を進めるときに楽しいと思うことが多かったですね。
就職活動中に聞いた『人と関わることが意外に多い仕事』まさにその通りだと思います」
お客様が、そしてその先にいるユーザーが、当たり前のように高い品質のサービスを使えるように──村上が率いるチームは、今日もたくさん会話しながら、システムで社会を支えています。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです