AIを強みとする井上 祐寛。プリセールスや技術支援を担当するかたわら、大学や業界団体での講演や雑誌の執筆も手掛けるなど、社内外で幅広く活躍してきました。これまでのキャリアを振り返りながら、仕事に対する想いと活動の原動力を語ります。

“技術”を使って多方面で活動──テクニカルエバンジェリストとしての信念

▲DXビジネス統括部 テクノロジーソリューションコンサルティング テクニカルエバンジェリスト 井上 祐寛

 

井上が所属するのは、“テクノロジーソリューションコンサルティング”という部署。さまざまな営業・開発案件に対する技術支援を担っています。

「部署のミッションは、技術目線での顧客課題の解決。部員は私を含めた6名構成で、クラウドやAI、Webアーキテクチャなど、メンバーそれぞれが会社の技術をリードするスペシャリストの集まりです。

 

営業担当が掘り起こした顧客課題を技術的な見地から解決へと導いていくこともあれば、デジタル製品開発の企画・技術支援を行うこともあります。直近では、ChatGPTを活用した企業向けサービスを開発しました」

井上が得意とする分野はAIや機械学習。それに関連する案件のプリセールス、技術支援などに携わるほか、“テクニカルエバンジェリスト”として、社内外への技術情報発信にも積極的に取り組んできました。

「講演、執筆活動、技術ブログでの発信など、さまざまな活動を行っています。最近だと社会人向けのリスキリングプログラムや大学生向けの授業の講師として、デジタル技術に関する講義を行うこともあります。ほかにも、業界団体の幹事など……いろいろあります(笑)」

社内外を問わず、幅広く活躍する井上。すべての活動の根底には、ある想いがあると言います。

「クレスコがまだ到達できていない分野へ進出する、1つのきっかけになりたいと思っています。今まで通りのことを普通にやっているだけではできないようなことをしようとしています。技術的な面で言うと、今後ビジネスの種になっていくような新しい技術領域を開拓して、社内で共有してその領域の知見をつけていくことで、種を育てていきたいですね。

 

それが実ったとしても、実ったことを知ってもらえないと意味がありません。新規顧客開拓や、社外での活動を通して、少しでもクレスコを知っている人を増やしたいとも思っています」

「仕組みがない」という壁を壊し、社内イベントで開発したシステムを製品化

▲2002年の“クレスコフェア”で開発したサービスが最優秀賞を受賞、製品化につなげた

 

そんな井上がクレスコに入社したのは1989年。いちエンジニアからのスタートでした。

「入社して最初に担当したのがメインフレーム(大企業や官公庁などの基幹情報システムなどに用いられる大型のコンピュータ製品)の案件。公共、情報通信、保険、証券、航空、銀行など、さまざまなシステムの開発に携わりました」

その後、井上は当時流行し始めていたオープンシステムの担当となりました。

「私が趣味でつくったオープンシステムのコンピュータゲームで、先輩たちが昼休みに遊んでくれていました。それを見た当時の上司が、『オープンシステムをやった方が良い』と私の適性を判断したのが異動のきっかけでした。

 

正直、私はメインフレームが苦手で……オープンシステムではつくったものをすぐに動かして確認できるおもしろさを感じていましたし、異動させてもらえてよかったです」

その後、2002年の“クレスコフェア(※)”で、当時の先端技術、非接触型IC機能を搭載した社員証システムを出品したところ、ビジネス部門の最優秀賞を受賞。その後、社内の有志が集まって開発を続け、2006年に製品化されました。
クレスコフェア:クレスコグループの社員がIT技術を駆使し、創意工夫を凝らした多彩なシステムやサービスを展示するイベント

「当時は働き方改革がそこまで進んでおらず、社員を守るという意味で『本業に集中しよう』という機運が強くて、本業ではない製品開発に時間を使いづらい環境だったので、製品化されるまでいろいろと工夫しました」

最終的に、自ら営業して、製品を買ってくれるというお客様を獲得。その上であらためて製品に価値があることを説明し、製品化に至ったと言います。

「大きな自信につながりました。今は社員個人がやりたいことを提案する風潮が根付いていて、制度や仕組みが整っていますが、当時はまったくなかったので、『“仕組みがない”という壁を壊した』と感じる出来事でしたね」

製品やサービスには、生まれてから消えるまでのライフサイクルがあります。井上たちが開発した製品もすでに終息を迎えました。その後に井上が希望した異動先は“技術研究所”。ここで井上はAIと出会います。

研究部門で“発信”と“AI”に出会う

▲技術研究所の研究成果を発表するイベント「オープンハウス」で発表する井上

「技術が好きで、今までのように『技術を使って何かを作りたい』と思い、技術研究所への異動を希望しました」

研究者というキャリアチェンジを果たした井上は、まず近距離無線通信の研究に携わります。

「その時も研究の成果を製品化することになりましたが、その製品はテレビでも取り上げられました。テレビ取材を受けたのはクレスコにとっても初めてのことで、盛り上がりましたね」

製品化の後、井上が次の研究テーマとして取りかかった技術がAIでした。

「『研究成果を社内外に広める』ことも技術研究所のミッション。このころに社内のAI勉強会を立ち上げて、研究成果を発表したり、AIの基礎スキルを教えたりしていました。そこで誰にでもわかるように説明しようと努めたことが、テクニカルエバンジェリストとしての原点になっていると思います」

着々とAIの知見を高めた井上は、AIが本格的に流行し始めたこともあり、お客様の課題をAIで解決していこうと、AI開発部門へ異動します。コールセンター向けのオペレータ回答支援などを担当しますが、並行して実施した名古屋での経験が、社外活動を加速させるきっかけになりました。

「名古屋事業所は2017年にできたのですが、当時のクレスコは名古屋では無名。知名度を上げる必要がありました。

 

そんな時、当時の名古屋事業所長から、『当社が加盟している“車載組込みシステムフォーラム”から、AIに関する勉強会を実施してくれないかと声をかけられたので、お願いできないか』と言われたんです」

名古屋事業所は自動車システム関連の技術者が多いものの、AIの技術者はいなかったため、井上が出張して勉強会の対応をしました。

「これがきっかけでフォーラム内での横のつながりが生まれ、2021年からは幹事を務めるまでになりました。執筆などの社外活動が多くなっていったのも、名古屋で勉強会をしたときくらいからだったと思います。

 

当時の事業所長とはたくさん会話しましたが、『地域に密着した大手企業との直接契約獲得を目標としている』というアツい想いをほぼ毎回聞いていました(笑)。でも、気づいたら私自身の夢にもなっていて。名古屋事業所は今も年々規模が大きくなっていて、私もうれしいです」

世の中に認められるエンジニアになりたい──技術を極めた先にあるキャリアを示す

▲今後もさまざまな側面で発信を続けていく

 

井上の社外活動は、“つながり”で広がっていったと言います。

「IT系の雑誌の寄稿は、前述の技術ブログの記事を見て編集者の方からお声掛けいただいたことがきっかけ。リスキリングプログラムの講師は、別の出版社の以前の編集長から『この大学が講師を探しているのだがどうか』と打診いただいたことがきっかけでした。

 

会社というよりは、私個人の活動の延長線上で、活動がさらに広がっていったので、自分が認められた気がして、うれしく思っています」

通常業務のかたわら、社外活動も拡大している井上。その原動力はどこにあるのでしょうか。

「世の中に認められるエンジニアになりたいです。今、ありがたいことに肩書をいくつか拝命していますが、それに見合った活動ができているかという視点では、大いに改善の余地があると考えています。

 

また、技術を追求した先にどんなキャリアがあるのか、身をもって示せたらと考えています。若い技術者にとって、1つの手本となるような存在になれたらうれしいです。そのためにもこれからのテーマは“効率化”です。パフォーマンスを下げることなく作業時間を減らすことができたら、目指してくれる人も増えるのではと思います」

また、「仕組みを作ることが好き」と、井上は続けます。

「前例のない仕組みを作るのが好きで。どの技術が好きというわけではなく、誰も作ったことがないようなことを考えることが好きなんです。

 

クレスコは自由な発想で自己実現ができるので、私にとっては良い環境です。経験やスキルをつけるという意味でも、入社してすぐに100%自己実現できるとは限りませんが、日々努力していくうちに、想いを少しずつカタチにしていける風土がクレスコにはあると思います」

大変なことは多かったけど、苦い思いはあまりしてこなかった、と語る井上。彼はこれからも“開拓者”として、技術の輪を広めていくことでしょう。

 

※取材内容は2023年6月時点のものです。