クラウドのスペシャリストとして、社内外に対してクラウドの技術支援を行っている遠藤 幸二。そんな遠藤が技術以上に大切にしているものは“対話”。長年にわたって独自の視点でITの世界を見続けてきた遠藤が、自身の経験から得た価値観について語ります。
▲DXビジネス統括部 テクノロジーソリューションコンサルティング シニアITアーキテクト 遠藤 幸二
遠藤は、クラウドやAIなど、各分野のスペシャリストが集まる“テクノロジーソリューションコンサルティング”という部署で、顧客の課題を技術目線で解決することをミッションとしています。
「6人のメンバーがいる中で、私はクラウド分野の担当として、営業や開発フェーズでの技術支援を行っています。
たとえば、当社が最近クラウド分野で力を入れている公共向けの案件では、クラウドの利点を最大化できるように、全作業工程を把握した上での提案書作成や、協働メンバーの提案書作成支援を行っています。
民間企業のお客様に対しても似たような活動を行っていますが、主にITに関する課題をヒアリングして、解決策を提示し対策を実施するほか、お客様専属の技術アドバイザーを担うこともあります」
遠藤は、CET(※)初代メンバーでもあります。
※ CET:“CRESCO technical Expert Team”の略。特定の技術や知識の第一人者として社内認定されたメンバーで構成され、社員からの質疑応答、技術的なフォローや勉強会の開催などを行っている
「2015年にCETが設立されたタイミングで選ばれました。クレスコにとって当時初めてだったクラウド案件に私が最初に従事していたので、知識があると認知されていたのが理由かもしれません。
なお、その案件は2012年に始まった通信業界向けの案件でした。その時は案件の切れ目でちょうどタイミングが良かっただけで、実際にその当時、クラウド技術に関する知識はほとんどありませんでした。私がクラウドと出会った理由は“たまたま”なんです(笑)」
今でこそ一般的になったクラウドですが、当時は新しい技術であり、お客様自身もクラウドを扱うのは初めてだったと言います。
「お客様は『一緒に勉強していきましょう』というスタンスでしたね。学んでいく中で、今までは手組みで寒いサーバールームにこもっての作業だったサーバー構築が、快適な室温の執務室からWebブラウザのボタンをクリックしていくだけで完結し、こんなに簡単にできるんだ!と驚きました。
当時は日本語の資料がまだ少なく、英語の資料ばかりだったこともあり大変ではありましたが、それ以上に新鮮さのほうが大きかったです」
クレスコの中では“クラウドのベテラン”である遠藤ですが、最近はCETとしての関わり方を変えていると続けます。
「私の今の役割はプリセールスなので、以前のように特定の案件に深く参画して直接クラウドを構築する機会は減りました。
なので、CETとして質問を受けても、私が回答するのではなく、別の社員につなげる形で間接的な支援をすることもあります。今は、私以外にもクラウドに詳しい社員がたくさんいますから」
▲プライベートでは、2児のパパでもある
2005年にクレスコに中途入社した遠藤ですが、もともとはSEを目指していたわけではありませんでした。
「実はITにまったく興味がなく、警察官や消防隊員、自衛官などの公務員を目指していました。しかしタイミング悪く、当時盛況だったお台場を舞台にした某刑事ドラマの影響で試験倍率が例年より高くなって、採用が厳しくなってしまって(笑)。そこでいったん就職して、働きながら公務員を目指して勉強を続けることにしました」
公益法人に就職した遠藤が担当したのが社内SEで、そこで本格的にITを扱うようになりました。ITとの出会いもたまたまだったと続けます。
「やがて家族ができ、次のキャリアステップを考えたときに、公務員という異業種への転職ではなく、ITのキャリアをベースにステップアップしようと決めました」
“IT専門ではない法人出身”というキャリアの遠藤に転職エージェントが勧めたのは、大手ではなく中堅どころのIT企業。その中の1社がクレスコでした。
「クレスコと出会ったのも、“たまたま”というか、ご縁だったんだなと思いますね。
前職ではアプリケーション開発もプラットフォーム構築も担当してきましたが、プラットフォームのほうに興味があったので、クレスコでもプラットフォーム構築に携わらせてもらいました。長期の案件から短期の案件まで、さまざまな案件を経験しました」
2015年ごろからは、ITアーキテクトとしての役割も担うようになりました。
「クレスコに入社して間もない時は、運用や保守などシステムの面倒を見る工程が中心でしたが、そこから構築、設計、要件定義と、少しずつ上流工程に携わるようになっていきました。
お客様先に常駐して業務を行うことが多かったのですが、実際の社員のように扱ってもらい、そこでプラットフォーム構築のイロハを学ばせてもらえました。その積み重ねで、ITアーキテクトのような立場になれたんだと思います」
▲2019年、グループ会社とのオフサイトミーティングで発表する遠藤
遠藤が一番印象に残っている案件は、公共分野の大規模案件だったと振り返ります。
「クラウドの経験もあったタイミングでしたが、その案件はオンプレミス(自社施設内に機器を設置してシステムを導入・運用すること)案件で、クレスコは他社が受注した案件にヘルプで入るという立ち位置でした。
私は他社と混成の約30名のサーバー構築チームのリーダーで、担当業務は2カ月で約300台のサーバーを構築すること。一言でいうと、“無茶”。どうしてこうなった……と、困惑したことを覚えています」
無茶だということはお客様も理解していて、半ばあきらめ状態だったと言います。
「重い雰囲気の中でうまく立ち回るためにいろいろ考えました。
技術面ではクラウド案件で培った経験が役立ちました。オンプレミスでもクラウドで使う技術の真似できる部分は真似をして、『この方法でやりませんか』と提案し、そのやり方を採用していただきました」
その後は、構築の作業が効率的に進むよう、マネジメントに振り切って行動しました。
「それまでのリーダー経験から、『コントロールできない“人”に備える』ことを念頭に行動しました。突然の仕様変更、設計誤り、体調など、人に起因するリスクはいろいろあります。この案件はメンバーの人数が多いので、とくに気を配る必要がありました。
一方で、サーバー構築の工程や手順は一定の“ルール”があり、コントロールができます。
私のやり方は、予想できないことを基本的になくし、事象をコントロール可否に選り分けて整理し、どう付き合えば良いか対策を立てていきます。イメージとしては、シミュレーションRPGゲームの感覚で、俯瞰的に全体を見て全体を整理し、“勝つ”方法をじっくり考えるのです」
このようなやり方でマネジメントをするコツは、人と会話することだと、遠藤は続けます。
「勝ち筋に沿った進め方をお客様に納得いただくために『この方法ならできます』と会話し、有言実行することで信頼関係を構築できました。
またメンバーには、『こういう作業がこの時期に発生するから、こういう準備をしておけば大丈夫。うまくやっていこう』と、自分の意思を常に伝えることに注力しました」
最終的に案件は丸く収まり、お客様やメンバーからは「この短期間でここまでできるとは思っていなかった。あなたにしかできない仕事だ」と感謝されたと言います。
「他社のメンバーの残業も少なく収めることができ、メンバーの上司の方からも感謝してもらえました。会話をして信頼や理解を深めることができたから、お互い“ありがとう”と言って円満にチームを解散できました」
遠藤はこの経験を通して、大事なのは“人”なのだと再認識したと言います。
「採用した技術を信じて進めていく進捗管理も大事でしたが、人のマネジメントが功を奏した案件だと思っています。お客様や協働するメンバーとの信頼関係を作り、円滑に案件を進めることができ、結果として感謝され、さらに次の仕事につながるのはおもしろいと思います」
▲クラウドの経験と知識を活用した提案でお客様から高評価を受け、2023年4月に“CRESCO AWARD(社長賞)”受賞(右から、遠藤、社長の冨永)
クラウドのスペシャリストである遠藤は、技術力のベースラインを前提に、仕事を創ることが可能になるのだと考えています。
「お客様のビジネス効率と競争力向上に貢献することがITエンジニアの役割であり、これを実現するには技術力の保有が大前提です。技術の価値は、お客様の立場などを理解して、技術でお客様の課題を解決できることにあるので、ベースラインとして絶対的に必要になりますよね。
この活動の延長で仕事を獲得していくのが今の役割なので、獲得にまで至れば“勝ち”もしくは“価値”であり、やりがいを強く感じます。もちろん獲得してからのフォローもしっかりやります」
そういう意味で、クレスコには伸びしろがあると遠藤は言います。
「クレスコの社員は、担当している開発案件で必要とされている技術や、個人的に興味がある技術に対して自己研鑽の意欲が高い人が多く、身につけた技術力は、より規模の大きい企業にも引けを取らないレベルだと思っています。
ただ、その技術を使ってビジネスにつなげることを考える人が多くないと感じていて、とてももったいないと思います。その必要性を私が伝えていけばよいのですが、道半ばです。今年から、CAS(※)にもなったので、少しずつ伝播していければと考えています」
※ CAS:“CRESCO A STARS”の略。「最高の技術・スキル」でクレスコを代表する社員を会社が認定する制度。認定された社員は、会社の持続的な成長に向け、社員・会社・ビジネスに影響を与える役割を担う
そんな遠藤の仕事のやりがいは、やはり“人”です。
「『クレスコとやりたい』『ぜひ一緒にお願いします』と言っていただけることに、一番のやりがいを感じます。技術で人とのつながりを創り、その結果でクレスコに貢献したいですね」
技術を使ってロジカルに、それでいて相手のことを考えて寄り添う。そんな意識でこれからも、遠藤は多くの人と会話し、“勝利”へと向かっていきます。
※ 記載内容は2023年7月時点のものです