グローバルビジネス&マネジメント室の森 文美は、クレスコのオフショア開発拠点であるベトナムに常駐し、開発の進捗管理や、オフショア開発の活用促進業務などを中心に担当しています。今回のインタビューでは、文化の違いによるコミュニケーションの難しさや、仕事における価値観について語ってもらいました。

▲国際女性の日に、ベトナムの女性メンバーの皆さんとパシャリ(森は最前列の左から2番目)
現在、森は、ベトナムにあるクレスコの子会社、クレスコベトナムに出向し、オフショア開発のスムーズな進行のために、現地メンバーのフォローや案件の進捗管理などを行う「コミュニケーター」という立場で働いています。
森:「コミュニケーターは、日本側(開発を依頼する側)のメンバー とベトナム側(開発を受託する側)のメンバーとの間に立ち、案件を円滑に進める役割を担っています。例えば、日本側との間でコミュニケーション上の問題が起きた場合、ベトナム側にヒアリングし、必要な是正を行ってもらうなどして、コミュニケーションギャップを埋める活動を行います。
案件内の一技術者であるメンバーたちに対し、コミュニケーターは技術面にはそこまで深く関与せず、あくまでもコミュニケーション面のサポートが中心です。現在オフショア開発自体はトレンドですが、いわばコミュニケーションに特化した役割の人が受託先のチームの中にいるというのは、なかなか珍しいことかもしれません。ちなみに、日本語を話せるメンバーがいるので、言語面で困ることはありません。
メイン拠点はハノイですが、同じベトナム国内のダナンにも事務所があり、月に1回は出張します。また、何名かのベトナム人メンバーが日本で勤務しているので、彼らとのミーティングのため、日本へも定期的に出張しています。」
ベトナムのメンバー向けに、スキル向上を目的とした研修の企画も行っています。
森:「例えば、何か問題が発生したとき、日本では『なぜその問題が起きたのか』、『再発させないためにはどうすればいいか』を考えるのが普通ですよね。それがベトナムだと、『その問題さえ解決すればOK』といった考え方のほうが主流だったりします。
こうしたギャップを理解し、日本からのオフショア開発受託時に生かしてもらうべく、日本ならではのコミュニケーションやビジネス習慣などをテーマにした研修を企画・実施しています。参加者はとても前向きで、『日本特有のコミュニケーション方法や考え方を学べて嬉しい』という声をいただくことが多いです。」

▲映像制作での撮影の様子
学生時代、ITについて学ぶ機会はほぼなかったと森は言います。
森:「もともとものづくりが好きだったことから、大学では映像制作を学べる放送学科で、主にCM制作を学びました。絵コンテを書くところから撮影、編集までやったりして…。エンタメ系への就職実績が多い学校だったので、私も何となくその方向で考えていたところ、就職活動の時期がちょうどコロナ禍と重なってしまったんです。
想定していた就職先が、ことごとく採用活動をストップするという事態に直面したことで、もう一度就職先について考え直すことになりました。その中で、私たちの生活のあらゆるところで目にするITなら、ものづくりの面白さも味わえますし、関われるものも幅広いだろうと考えました。」
数あるIT企業の中でクレスコを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
森:「まず私自身がIT未経験ということもあり、テレビなど、目に見えるものの組み込み開発でものづくりに携わりたい、というある程度のイメージはあったものの、明確な目標までは特に持っていませんでした。でも、独立系SIerなら、幅広い分野の開発に携わっているため、入社後の選択肢が広がりそうだと考えたのがクレスコを選んだ理由の一つです。
そしてもう一つは、面接時の印象です。これまでに自分がやってきたことについて、すごく興味をもって、深堀りして聞いてくれたんですね。そういったパーソナルな部分を聞いてくれたのはクレスコだけだったので、とても印象に残ったんです。」
入社後の3年間は、国内での案件を経験しました。
森:「入社後1年間は、人材派遣会社のWEBサイト保守・強化開発案件に従事しました。比較的案件の規模が小さかったこともあり、一人ひとりの業務範囲が広く、お客さまとのやりとりから開発、リリースまで一通り学ぶことができたので、とても良い経験になったと思います。
次に配属された、同じ人材派遣会社のWEBサイトのマイグレーション案件では、案件のチームリーダーとして、オフショア開発を担うベトナムチームをまとめる役を任されました。実は、特段ベトナムなどを希望していたわけではなかったのですが、せっかくお話をいただいたので、『やります!!』となって(笑)。現在の私の仕事につながる、オフショア開発やベトナムとの初めての接点がこの案件でした。
それまではタスクを振られる側だったのが、初めて振る側になったので、先を見通して、チームとして案件を回していくためにその時々でやっておくべきことは何か、またそれを誰に振るかなどを考えるのが大変でしたね。また、その当時はオフショア開発の知見が、私の部署や案件のメンバーに無かった時で、周りの人と相談しながら進めていきました。そのうち、『そんなに普通の開発と変わらないな』と感じるようになりました。」

▲ベトナム・ハノイの名所、トレインストリート
ベトナムと日本。文化や気質の違いによるトラブルが起こることもあります。
森:「日本人は、オブラートに包んだり、遠回しな言い方をしたりすることがよくありますよね。例えば、『これは問題じゃないかと思う』と言われたら、多くの日本人は『問題があるんだ』と認識すると思うんです。でも、ベトナムの人は『問題はないんだ』と解釈する。
また、時間の伝え方についても注意が必要です。単純に日本とベトナムでは2時間の時差があるので、日程調整の際は、日本時間なのか、ベトナム時間なのかをはっきり伝える必要がありますし、それ以外にも、時間の感覚についての違いもあります。例えば『なるべく早く』という言葉も、日本とベトナムでは受け取り方が異なるので、『日本時間の何時まで』のように明確にしておくことが重要です。」
双方の認識の齟齬や、スピード感の違いによる問題が起きないようにするのがコミュニケーターの役割だと森は言います。
森:「日本側、ベトナム側のどちらが良い、悪いとかではなく、伝えた人の意図しない形で伝わってしまうことはどうしても起こりえるので、ベトナム側だけでなく、日本側にも注意を促すようにしています。とはいえ、これは、オフショア開発や、日本、ベトナムに限った話ではないですね。
文化や国民性の違いを理解し、信頼関係を築くためにはコミュニケーションが重要だと思うので、ベトナムのメンバーとは積極的に会話するようにしていますし、またその際は、先入観をもたないように気をつけてもいます。
例えば、日本側からクレーム相談を受けた場合、すべてを真に受けるのではなく、ベトナム側のメンバーからも直接話を聞いて、フラットに状況を把握するように意識しています。
現在の私はベトナム側のメンバーであり、クレスコから出向してきている日本人でもあります。どちらか一方に偏った立場で物事を考えたり、判断したりしていては、どこで意見が食い違ってしまったのかを正確に把握し、どうすればトラブルの再発を防げるのかといった、建設的な解決案を導き出すことはできないと思っています。」

▲ベトナム・フーコック島の海。まさに楽園!
森自身がクレスコへ入社した頃と比べると、グローバルでの活躍を希望する人が増えたと感じています。
森:「“クレスコカフェ”などの、学生とクレスコ社員交流イベントで就活生と話していると、海外で働いてみたい学生さんが多いことに驚かされます。グローバル志向の若者が増えることは、オフショア開発の推進にもプラスなので、私としては大歓迎です。
とはいえ、希望した人が全員海外に行けるわけではないと思いますので、自分がどうしたいのかを発信し続けることが大事だと思います。ただ、それが独りよがりになってしまうとよろしくないので、自分のやりたいこと、そしてそれが会社にとってどのようなメリットになるのかを自分なりに説明できれば、きっと道は切り開けると思います。」
ものづくりへの興味がきっかけでクレスコに入社した森ですが、最近は心境に変化があるのだと言います。
森:「日本からベトナムへ、そして仕事を依頼する側から受ける側へ来たことで、以前よりも関わる人が圧倒的に増えましたし、日本の中でも、様々なところ、人をつなげたりするようになって。こうした環境で働いているうち、『関わる人みんなに楽しく働いてほしい』という気持ちが芽生えたんです。もちろん、今でもものづくりは好きですが、それ以上に、自分がクッションのような役割を担い、働く環境をよりよくすることへの興味のほうが強くなりました。
コミュニケーターという、ある意味特殊な立場からいろんな案件を見ていく中で、うまくいっているケースとそうでないケースでは、それぞれに共通する部分があることが分かってきました。今後はこの知見をより多くの部署などに広めることで、仕事しやすい環境づくりに貢献していきたいと思っています。」
ベトナムという新天地で、コミュニケーターという独自の経験を積んできた森。オフショア開発がトレンドとなっている今、今後の彼女の更なる活躍から目が離せません。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです。